自律神経と鍼灸

鍼灸治療と自律神経

健康を定義する重要な要素で、ホメオスタシスというものがあります。ホメオスタシスとは生体の内部や外部の環境因子の変化にかかわらず生体の内部環境が一定に保たれるという性質です。ホメオスタシスの維持は、間脳視床下部が指令を出し、自律神経系、内分泌系、免疫系が相互に影響を与え、協調しながら種々の生理的パラメータを調節することでなされています。

ここでは特に、鍼灸の自律神経系への作用について説明したいと思います。

自律神経とは、循環、呼吸、消化、発汗・体温調節、内分泌機能、生殖機能、および代謝のような不随意な機能を制御しています。

自律神経には2種類あり、活動する時に働く交感神経と、休む時に働く副交感神経です。

交感神経は活動時に働くので、血管を収縮させ、血圧や心拍を上昇させ、食欲を抑制します。(動物で例えると、狩りや戦う時の状態)

副交感神経は、休息時に働くので、血管を拡張させ、血圧や心拍を低下させ、胃腸の働きを活発にしたりします。(リラックスし、体を修復する)

健康な状態では、両者がその時々の状況に応じて働き、バランスが保たれていますが、心身のストレスが過剰(休息不足や、悩みすぎなど)になると、交感神経が過緊張になり、血流障害と冷えが起こり、白血球中の顆粒球が増えます。顆粒球は2,3日と短命で、死ぬときに活性酸素を放出し、免疫力も下がります。それによって組織や粘膜が破壊され、がんや潰瘍その他の疾病が引き起こされます。

逆に、副交感神経が活性化されていると、血流障害、冷えが改善され、白血球中のリンパ球が増え、血流が改善して免疫力が高まります。ただし、副交感神経が過剰に働くとアレルギー疾患やうつ病を引き起こすことがあります。大事なのは、その時々の状況に応じて、バランスが保たれていることです。

鍼灸治療においては、井穴刺絡(手足の爪の脇にあるツボから少量出血させる)によって自律神経のバランスを整え、免疫力を高める方法(自律神経免疫療法)や、鍼を浅く刺しやさしい刺激を加えると、リンパ球が増え、副交感神経優位に傾き、深く刺した時は、顆粒球が増え、交感神経優位になるという実験結果が報告されています。

東洋医学は2000年以上前からあり、科学とは異なった方法論なので、自律神経や免疫力という概念は当然知りませんが、病体や自然を丁寧に観察し、治療の経験を積み重ねることによって、これらのバランスの取り方を独自に作り上げてきたのだと思います。

※ここでは、説明をわかり易くする為に、福田━安保理論や水嶋医師の実験結果を参考にさせていただきました。

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